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生けた花の鮮やかさを一層引き立てる、シンプルで落ち着いた黒い鉢。

形や大きさはさまざまで、触るとザラザラしている・・・。実はこの鉢、捨てられるはずの砂からできているんです。

熱で溶けた金属材料を型枠に流し込み、製品を作り出す鋳造業。
製造される鋳物中に空洞を作る重要な型を「中(なか)子(ご)」といいます。

中子に使う砂は一度使用すると産業廃棄物として捨てられ、その量は市内だけでも月に2000トンになるそう。
中子を製造する株式会社SRサービス(吉良町)は、大量に捨てられてきた砂の再利用に取り組んでいます。

「捨てる砂をリサイクルしたいと考えていたとき、先代の社長が趣味にしていた盆栽を見て鉢にすることを思いついた」と話すのは、伴千寿樹社長(一色町)。
長年培われてきた中子を作る技術を応用して砂を固め、鉢植え「SuーNa(スーナ)」を生み出しました。

環境に優しいだけでなく、質感や色など見た目にもこだわった千寿樹さん。
廃棄される砂の黒色を生かしながら、かっこよさを意識して、約30種類のデザインを自ら考えました。

砂と砂の間に程よく隙間があるため水はけがよく、植物を育てるのに適しているとのこと。
植木職人に協力を依頼し、植物を育てても害がないと安全性も確認済みです。

商品に花を生けて販売し始めたのは、千寿樹さんの妻・あゆみさんのアイデア。
花を生けるのは、事務員の久米京子さんです。

「SuーNaを使い、フラワーアレンジメントのワークショップをしたい。多くの人に鋳物を知ってもらえると思う」とあゆみさん。
プリザーブドフラワーなどを生けて販売する商品は贈り物として人気で、全国から注文が届いています。

自動車や機械設備の部品などを製造する企業が集積する西尾市。
切削加工や樹脂成形などのさまざまな分野で多くの方が活躍し、日本のものづくりを支えています。

「鋳造業には、きつい・汚い・危険の3Kのイメージがある。自分たちの商品をきっかけに鋳造業のイメージが良くなってほしい。西尾のものづくりを盛り上げたい」と千寿樹さん。
産業の発展の影で廃棄されていた砂に目を向け、新しい価値を花開かせています。

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